白い象を追って

白い象を追い続けてはや20年 毎日が楽しさに溢れている

鍵の話

築60年はゆうに超えているであろう我が家は何回かのお色直しをしてもやはり歳は誤魔化せないようでガタがきているところがたくさんある。

僕の部屋の鍵がそうだ。

内側から回しをくるっと横にすると鍵がかかるシンプルなものなのだが、どうも鍵穴が錆びてしまっているのが時々指では回せないほど硬くなる。

頻繁に起こるなら修理に出そうと考えるのだが、普段は問題なく回せるのだ。

だから修理するに至らない。

硬くなると、あらゆる角度から勢いをつけてみたり、時には機嫌を損ねた猫を扱うように撫でてみたりする。

トイレに行きたくなったときに鍵が回らないと焦ってしまう。

一度、我慢できなくなり窓から用を足したこともある。お恥ずかしい。

この気まぐれな鍵を安定して開ける為に僕が使うようになったものがある。

それがペンチである。

ペンチで回しを挟んでグイッと回転。

こうすれば、どれだけ機嫌が悪くても開くのだ。

それから不恰好ではあるがペンチで鍵を開けるようになった。

しかし、時折 力でねじ開けられる鍵を見ていると僕は申し訳なくなって、かつてのように素手でコミュニケーションを取るんだ。